雪を降らせた寒さがようやくゆるみはじめ、今年も卒業の季節となりました。

卒業式で流れるクラシックの名曲といえば、パッヘルベルのカノン(正式には、「3つのヴァイオリンと通奏低音のためのカノンとジーク ニ長調」)、バッハのG線上のアリアなどがよく流れる曲のようです。
誰でも一度は聞いたことのある、穏やかだが厳かな響きが卒業式にぴったりしているのかもしれません。そのせいか、卒業式の進行に合わせてクラシックの名曲をならべたCDもあるようです。そこには、式が始まるまでの待ち時間に流す曲、生徒入場の曲、卒業証書授与の際に流される曲など、それぞれの雰囲気に合った曲が収められています。
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卒業は、慣れ親しんだ教室や勉強、行事を一緒に楽しんだ友人、先生との”別れ”でもあります。

“別れ”がテーマのクラシックの曲でまず思い浮かぶのが、ショパンの「別れの曲」でしょう。卒業式でも流れることがあるようです。
「別れの曲」は、ショパンが名付けたものではなく、そう呼ぶのは実は日本だけで、海外ではおもに「悲しみ」と呼ばれています。正式には、練習曲(エチュード)作品10第3番ホ長調です。
長調で書かれているのに、優しくも心にしみるせつない響きがあります。ショパンが命名しなかったとしても、この曲にはやはり「別れ、悲しみ」があるといえるでしょう。ショパンはこの曲を弟子にレッスンをした際に「ああ、私の故国よ!」と叫んだ、と言われています。つまり、この曲はショパンにとって祖国ポーランドとの「別れの曲」なのでしょう。
ショパンにはもう一つ”別れ”にちなんだ名曲があります。通称「告別」あるいは「別れのワルツ」と呼ばれる、ワルツ第9番変イ長調 Op.69-1 です。
恋人マリア・ヴォジンスカに、別れの作品として贈られたと言われています。優しいピアノの響きは「別れの曲」同様ですが、ワルツの軽やかなリズムがどこか希望を感じさせるような気がします。
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さて、”別れ”にちなんだ名曲で、忘れてはならないものがベートーヴェンのピアノソナタ「告別」です。正式には、ピアノソナタ第26番「告別」変ホ長調 Op.81aです。この曲名はベートーヴェン自身が名付けたものです。
生涯にわたって彼を支援し、友人、弟子でもあったオーストリアの貴族ルドルフ大公に献呈されたピアノソナタです。ナポレオンに包囲されたウィーンを脱出する大公への”別れ”を告げるための曲ということです。ただ、3楽章からなるこの曲には、第1楽章から「告別」、「不在」、「再会」とベートーヴェン自身が書き込んだ標題がつけられていて、ベートーヴェンは大公との”別れ”から”再会”までをこの曲で表していることになります。
そのためか、やや重々しい雰囲気で始まった曲は、すぐに力強い響きへと進み、「不在」の寂しさを経て、最終の3楽章では明るく躍動感に満ちた「再会」の喜びを表して終わりを迎えます。
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別れは寂しいものですが、同時に再会の喜びや新たな出会いにつながるものでもあります。
だから、卒業式の定番曲の一つに、ヴィヴァルディの「四季」の中の「春」が選ばれているのも納得です(ヴィヴァルディ自身は「四季」と呼んだことはないようですが、、)。正式にはヴァイオリン協奏曲第1番「春」です。春の訪れを高らかに歌い上げるメロディが、私たちの心を湧き立たせ新たな旅立ちへと誘います。

最後に、”春”の名曲をもう一つ。
ベートーヴェンのヴァイオリンソナタ「春」です。正式には、ヴァイオリンソナタ第5番「春」ヘ長調Op.24です。ヴァイオリンとピアノのための2重奏のソナタです。
明るく優雅な旋律が響き渡るメロディは、希望に満ちた旅立ちにふさわしいのではないでしょうか。
テレビドラマや映画になったコミック「のだめカンタービレ」で、指揮者志望の才能あふれる千秋真一(玉木宏)とヴァイオリンを専攻する落ちこぼれの峰龍太郎(瑛太)が弾いた曲です。千秋のピアノが自由奔放な峰のヴァイオリンをたくみに誘導して、一面の花畑の中にいるような情景をつくりだす、というシーンになっていました。
そして、この新たな出会いがドラマを進めていく原動力にもなっていたような気がします。
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