年明けに伊豆まで出かけてきました。
暖かい日差しに厚手のコートを着てきたことに後悔しながら、駅前の通りを散歩しておみやげ屋さんに入ると「お正月のメロディ」が聞こえてきました。ゆったりとした箏(琴-こと)の音色、宮城道雄の「春の海」です。

すぐ目の前に広がる伊豆の海は、本当に穏やかで冬でも暖かい日差しを受けてキラキラと輝いていました。「春の海」ののんびり、ゆったりした調べがよく似合っているのです。「お正月だなあ」という気分になりました。
作曲家の宮城道雄は、ご存じのように盲目の演奏者・作曲家で、クラシック音楽にも精通していて作品にもその影響が見られ海外でも高い評価を得ています。
しかし、その最後は、列車からの転落死という痛ましいものでした。
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ところで、初めに書いた”箏(琴-こと)”についてですが、普段「オコト」と言えば「お琴」と書くのではないでしょうか。しかし、今年1月4日放送の「題名のない音楽会」で、「”コト”をテーマに」と紹介していましたが、その時には「琴」ではなく「箏」を使っていました。
ではその違いは何か調べてみると、”胴”つまり楽器本体に”柱”があるかどうか、ということでした。”柱”があるのが「箏(コト:ソウ)」で、ないのが「琴(コト:キン)」。”柱”とは、”胴”に立てる支柱で弦を張るものです。バイオリンで言えば、”駒”にあたるものです。でも、バイオリンと箏ではその役割は大きく異なり、箏の”柱”には移動させて音の高低を調節する役割があります。
さらに、「箏」と「琴」は歴史的に全く異なっているようです。
「琴」の起源はとても古く弥生時代の日本がルーツのようです。一方、「箏」は奈良時代に中国の唐から伝来し雅楽の伴奏楽器として使われたと言われています。
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日本の「春の海」のように、きっとどこの国にも”新年のメロディ、曲”があるのではないでしょうか。

音楽の都ウィーンでは例年、世界を代表するオーケストラ、ウィーン・フィルがニューイヤーコンサートでウィーンゆかりの作曲家(と言ってもほとんどシュトラウス・ファミリーなのですが)の作品を演奏します。
そして、コンサートのアンコールで演奏される曲は、”ワルツ王”と呼ばれるヨハン・シュトラウス2世の「美しく青きドナウ」。
アンコール最後の曲は、”ワルツの父”と称されるヨハン・シュトラウス1世(2世の父)の「ラデツキー行進曲」で、観客の手拍子で盛り上がりウィーンの新しい年の幕開けとなるようです。
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国立オペラ座の近くに、音楽をテーマにした体験型博物館、音楽館 Haus der Musik があります。楽器の仕組み、音楽とオーケストラにまつわる様々な展示や施設があり、実際に参加して体験することができます。

中でもスクリーンに映るウィーン・フィルを指揮するアトラクションは楽しい企画です。私も以前ウィーンに旅行で出かけた際に、ウィーン・フィルの映像を見ながらバーチャルで指揮を楽しみました。私の指揮棒に合わせて、ニューイヤーコンサートのアンコール曲「ラデツキー行進曲」が演奏されるのです。
また、受付前のホールにはグランドピアノがあり、受付に申し出れば弾くことができます。もちろん無料です。私も、ウィーンを主な活躍の舞台としたベートーヴェンの曲を弾いてきました。私が弾いた主題(*1)のヘ長調の部分は、「春の海」のようにゆったりしたとても穏やかで優しい曲です。
( ベートーヴェン:創作主題による6つの変奏曲(*2) ヘ長調 Op.34(作品34)の主題のヘ長調の部分 )
【参考】
*1 主題:テーマともいう(テーマの訳語が主題である)。曲を構成する最も重要なフレーズ(音楽的まとまり)で、作品の意図を示している。
*2 変奏曲:主題をもとにして、それを構成する要素(リズム、テンポ、調など)を変化させることを「変奏」とい い、主題といくつかの変奏からなる楽曲を変奏曲という。
*ベートーヴェン:創作主題による6つの変奏曲 - この曲は、ベートーヴェン自身が「画期的な曲」と呼んでいたと言われるように、それまでの変奏曲がよく知られた主題をもとに変奏していたのに対し、この曲はベートーヴェン自身が作曲した主題をもとに作られている。また、主題と6つの変奏曲のすべてが異なる調で書かれていて、さらに拍子やテンポにも変化が加えられている。

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