私たちは、ふだん音楽を楽しみとして受け止め、曲を聴いたり歌を歌ったり、楽器を演奏したりしています。しかし、最近では、音楽がヒトの脳に与える影響についての研究が盛んになり、音楽が脳を活性化するための刺激としても考えられるようになってきました。
そこで、今回は音楽がヒトに与える影響について、調べてみました。
音楽がヒトに与える影響には、主に2つあります。
1.感情・気分に与える影響
2.行動に与える影響
この中で、”1.感情・気分に与える影響”については、誰でも経験することで、気分を変えるために音楽を聴くという人も少なくないでしょう。
最近では、特に”2.行動に与える影響”が注目されていて、盛んに研究されています。
つまり、仕事や学習、勉強などの活動に及ぼす影響・効果に着目した研究が行われているのです。
そして、音楽の持つこれらの特徴によって、私たちは次のような「音楽の贈り物」を手にすることができるようです。
①リラクセーション効果
②集中力・記憶力の向上

1.人間の感情・気分に及ぼす影響 ➯ リラクセーション効果
曲(音楽)には一般的にそれぞれ、悲しい曲、楽しい曲といったような”感情的性格“があります。
そして、その性格により曲には気分誘導効果があるようです。
曲の持つ性格が、人の感情・気分に影響を与え、悲しい気持ちにしたり楽しい気分にすることはよく知られています。

😔また、悲しい時に悲しい音楽を聞くこともあります。
悲しい時に悲しい音楽を聴くと、より悲しい気分になるように思われますが、「非常に悲しい気分の時に聴くと悲しみを和らげる効果がある」ともいわれています。
ただし、悲しい音楽は悲しみが弱い時には、目立った効果を及ぼさないということです。
☺️曲のリラクセーション効果
子守唄は筋肉の緊張を減少させ、行進曲はそれを増大させることが実験でも示されています。
つまり、音楽は、心拍数や収縮期血圧、副交感神経系に影響を与えるのです。
一般的に、
「テンポが速く、メロディーが複雑な曲はヒトを活動的にし、スローテンポでメロディーが単純な曲はヒトを落ち着かせ、リラクセーション効果が得られる。」
と言われています。
【例】リラクセーション効果のある代表的な曲 (多くのヒーリングCDで取り上げられている)
バッハのG線上のアリア
パッヘルベルのカノン

2.人間の行動に与える影響・効果 ➯ 集中力・記憶力の向上
音楽には、ヒトの行動をコントロールする力があるといわれています。
音楽を聴くと、運動野・運動前野(運動に関係する脳の場所)が活発に活動することが明らかになっています。
特に、リズムを感じている間、私たちの体の動きは速く、なめらかになるのは、リズムが運動のタイミングを教えてくれるからです。
①消費者の行動に及ぼす影響・変化

【スーパーマーケットでの実験】
アメリカの大学で行われたスーパーマーケットでの実験では、次のようなことが明らかになりました。
BGMによって、客の消費行動が変化することがわかりました。
・アップテンポのBGM:客の滞留時間 短い 購入額 少ない
・スローテンポのBGM:客の滞留時間 長い 購入額 多い
つまり、音楽のテンポが人の歩くスピードや食べるスピードに影響を及ぼし、ひいてはそれが人の消費行動にも作用するのです。
②仕事・学習などの行動への影響

これまで見てきたように、音楽はヒトの”楽しみ”であるばかりでなく、”機能的刺激”として、つまり”道具”として利用できることがわかります。
特に最近の研究よると、音の周波数(音の高低)やテンポ(音の速さ)によって、ヒトの脳の特定の部位の活動を高めることができるようです。
集中力を高め、作業効率を上げる音楽の条件は?
ⅰ. 周波数 ー 音の高さ
たとえば、集中力を高めるには、10~30Hzの音が含まれている音楽を聴くのが効果的といわれています。
ただ、人間の可聴域は、一般的に20Hzから20,000Hz(20kHz)の範囲)で、10~30Hzの音はヒトが聞くことができるギリギリ低い音です。( 下の鍵盤図の左端の27.5 〜 32.7Hzの部分がそれにあたる)


また、耳には聞こえない超高周波(20,000Hz以上の音)も、脳の活動に影響を及ぼしていることが明らかになっています。楽器の音には、この超高周波や先の低周波が含まれていて、耳以外の器官を通して(骨伝導のように)脳に影響を与えているようです。
そうすると、音楽をイヤホンで耳だけで聴くと、超高周波や低周波は脳に届かず、貴重な音楽の贈り物の価値も幾分か失われていることになります。
ⅱ. テンポ ー 音の速さ
速いテンポの曲を聴き、その後作業・活動をすると作業効率が上がり、記憶力も上がるといわれています。
それは、短期記憶で使われる場所と音楽によって活動する場所はほぼ同じで、両者が活性化するからです。
なかでも、リズムを感じながら音楽を聴くと効果があるといわれています。
従って、リズムが認識しやすい、テンポの速い曲が効果的 ードラムなどの打楽器、ピアノなどの鍵盤楽器による、速い曲が効果的です。仕事や勉強の前に聞くことが大切です。
曲のテンポとしては、” Allegro(速く、軽快に)、つまり♩=120 ~ ” がおすすめです。
Allegro(♩=120 ~ 152 )の範囲なら、効果があるようです。
【テンポ ♩=120 の音】
一般的に、日本人には、3拍子より4拍子の曲がおすすめと言われるので、4拍子のテンポ ♩=120の音も、載せておきます。
【4拍子のテンポ ♩=120 の音】
*ところで、遅いテンポの曲はどうかというと、読書や資料を読んで作業する場合などには効果があるとされます。
ⅲ. メロディ、歌詞
集中力を高めるのは、主にリズム、テンポであり、メロディや歌詞ではないようです。
そこで、メロディは単純で目立たないもので、歌詞のない音楽・曲の方が集中力を高めてくれるでしょう。

実際に、周波数、テンポ、メロディ、歌詞について、上のような条件を満たす曲を探すことは簡単ではありません。
ただ、私が耳にする音楽(曲)の中でどうやら有効と思えるものは、ドラマのBGMとして使われている音楽(曲)のいくつかが当てはまるように思われます。
1例をあげると、テレビ朝日で放送されていたドラマ「科捜研の女」のテーマ音楽、特に”証拠の分析の場面”で流れているテーマ音楽が条件を満たしているように思われます。(同じテーマ音楽でも場面によってアレンジが異なっているようで、すべてのテーマ音楽が条件を満たしているわけではありません。)
テンポは ♩=126 ~ 135 で、メロディは目立たず繰り返され、低い周波数の音も入っている歌詞のない曲、という条件を満たしているからです。
*下の参考文献にあげた「すごい音楽脳」には、作業・活動前に聞いて集中力を高めるための音楽がダウンロードできるURLが用意されています。
興味のある方は、ダウンロードして試してみてはいかがでしょうか。
【BGMの効果】
最後に、音楽を作業・活動中にBGMとして聞く場合の効果について触れておきます。

作家の大江健三郎は若いころジャズを聴きながら執筆をしていた時期があったと言い、版画家棟方志功はクラシック(特にベートーヴェンの第9)を聴きながら版画を彫ったといわれています。
この二人の芸術家は、BGMをうまく利用できたのでしょう。
しかし、BGMの効果は個人差が大きく、効果がある場合もあれば、ない時もあるとのことです。
一般的に、内向的な人や音楽を演奏する人には、BGMが邪魔になる傾向があるようです。
《まとめ》
音楽を機能的刺激として用いる時には、次の点にご注意を!
1.歌詞のない曲が適している
2.リラクセーション効果を求める時は、スローテンポでメロディーが単純な曲が良い
3.悲しみが強い時には悲しい曲が、悲しみを和らげる効果がある
4.メロディが単純で、低い周波数の音を含む、テンポの速い(♩=120 ~ )曲を、作業・活動の前に聞くと、作業効率が上がり集中力が高まる
5.作業中のBGMは、その効果には個人差が大きい。有効だと思う人は、積極的に活用しても良い
「音楽の贈り物」を上手に使って、普段の生活、さらに仕事や勉強に役立ててみてはいかがでしょう!
参考文献
:齋藤 寛 「心を動かす音の心理学」 ヤマハミュージックメディア
:宮崎 敦子 「すごい音楽脳」すばる舎
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